トップ / スペイン・ポルトガル

パン・コン・トマテPan con tomate レシピ

pa amb tomàquetパ・アム・トゥマケット

種類
朝食
地域
スペイン・ポルトガル(カタルーニャ)
分量
2人分(4切れ)
難しさ
やさしい
公開
オリーブ材のテーブルの素焼きの皿に、トマトをこすりつけたトーストが3枚。断面はトマトで赤く湿り、オリーブオイルと塩の粒が光っている。横に果肉を使い切ったトマトの皮、奥にカフェ・コン・レチェ

この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。

パン・コン・トマテは、焼いたパンに熟したトマトの切り口をこすりつけ、塩とオリーブオイルをかけたものです。カタルーニャでは朝ごはんにも、昼や夜の食事にも欠かせない、いちばん身近なパンの食べ方です。

材料はパン、トマト、塩、オリーブオイルの4つだけです。そのぶん、パンの焼き方とトマトの熟し具合で味が大きく変わります。

パン・コン・トマテとは

カタルーニャ語では「pa amb tomàquet」(パ・アム・トゥマケット)、スペイン語では「pan con tomate」と書きます。どちらも「トマトのパン」「トマトをつけたパン」という意味です。「パントゥマカ」という呼び名も広く使われています。マヨルカ島など、バレアレス諸島でも食べられています。

19世紀の農村から、とされる

トマトはアメリカ大陸から伝わった作物で、パン・コン・トマテはそれほど古い料理ではないと考えられています。カタルーニャ州政府の文化遺産のサイトは、最初の記録は19世紀のものだとしています。

食の歴史家ネストル・ルジャンは、カタルーニャの文献に初めて現れるのは1884年で、農民が夏に、乾いてかたくなったパンを柔らかくするために考えたものだ、としています。州政府の文化遺産のサイトも、ルジャンの説として、トマトが豊富になった時代の農村で、乾いたパンを柔らかくするために生まれたと紹介しています。何百年も続く料理ではない、というのがルジャンの考えです。

カタルーニャの新聞アラの記事によると、この1884年の記録は作家ポンペウ・ジェネールの文章で、ルジャンが1984年の新聞記事で取り上げたものです。写真家レオポルド・ポメスも、1985年の著書『パ・アム・トゥマケットの理論と実践』で1884年をいちばん古い記録としました。ただし同じ記事は、ジェネールの著作の中でこの記述を確かめるのは難しいとも書いています。

料理人で、食の研究機関アリシア財団を率いるトニ・マサネスは、いつ生まれたかよりも、なぜ生まれたかが大事だと話しています。農家が自分の畑のトマトの種を残し続けてきたことと、この料理が一緒に育ってきた、という見方です。また、アラの記事は、トマトを使う前から、パンににんにくとオリーブオイルをつける食べ方があったと伝えています。

いつ、どこで食べるか

カタルーニャでは、朝ごはんにカフェ・コン・レチェ(ミルクたっぷりのコーヒー)と一緒に食べるのが定番です。生ハムやチーズ、腸詰め、トルティージャ(スペインのオムレツ)をのせたり添えたりすれば、ワインと合わせる食事やつまみにもなります。

パン・コン・トマテのレシピ:材料(2人分(4切れ))

準備 10分(トマトは前もって室温においておく)調理 5分(パンを焼く)難しさ やさしい

パン

  • 田舎パン(パン・ド・カンパーニュ)(皮がかたく、中に気泡のあるもの。厚さ1.5cmに切る)4切れ(約200g)

トマトと仕上げ

  • 完熟トマト(中くらいで、赤く熟して指で押すと少しへこむもの。冷蔵庫から出して室温にしておく)2個(約300g)
  • 塩(1切れに約0.4g)1.5g(小さじ1/4)
  • エクストラバージン・オリーブオイル(1切れに10ml(小さじ2))(Amazon)40ml(大さじ2と小さじ2)

道具

  • オーブントースター(魚焼きグリル・焼き網・フッ素樹脂加工のフライパンでもよい)(楽天)
  • 包丁とまな板

作り方

  1. トマトを切る

    トマトを洗って水気をふき、ヘタを取る。ヘタの跡とお尻を結ぶ向きに縦半分に切り、切り口に種のまわりのゼリーが出ているのを確かめる。トマトは冷蔵庫から出して、室温になってから使う。

  2. パンを焼く

    パンを厚さ1.5cmに4切れ切る。オーブントースター(1000W前後)で3〜5分焼く。表面が薄いきつね色になり、指で押すと表面はカリッとかたく、中はまだ弾力があればよい。中まで乾くと、トマトがしみ込まずにラスクのようになる。魚焼きグリル(両面焼き)なら中火で2〜3分、焼き網やフライパンなら油をひかずに中火で片面1〜2分ずつ焼く。

  3. トマトをこすりつける

    パンが熱いうちに、トマトの切り口をパンの片面に当て、軽く押しながら小さな円を描くように動かして、縁まで全体にこすりつける。1切れにトマト半分を使う。果肉とゼリーがパンの表面ですりおろされて、皮が手に残っていく。パンの表面がうっすら赤く湿るくらいが目安で、ジャムのように厚く塗らない。残った皮は使わない。

  4. 塩をふる

    トマトの上に塩1.5gを4切れに分けてふる(1切れに約0.4g)。トマトの水分で塩が溶けて、表面に広がる。

  5. オリーブオイルをかけて、すぐに食べる

    オリーブオイル40mlを、1切れに10mlずつ、10cmほどの高さから全体に回しかける。パンがトマトを吸って柔らかくなる前に、すぐに食べる。

朝はカフェ・コン・レチェと一緒に。生ハムやチーズをのせた食事には、赤ワインやカバ(スペインの発泡ワイン)も合います。

料理科学:パンを焼いて表面を粗くする理由

焼いたパンがおろし金になる

パンを焼くと、表面の水分が飛んで、かたく粗い面になります。同時に、パンのたんぱく質と糖が反応して色づくメイラード反応が進み、焼いた香ばしい香りがつきます。

このかたく粗い面に、トマトの切り口を押しつけて動かすと、パンがおろし金の役目をします。柔らかい果肉と種のまわりのゼリーがパンの表面に削り取られ、かたい皮は手に残ります。アラの記事が紹介するポメスの作法でも、皮は持つためのもので、塗るものではないとされています。

焼かない柔らかいパンでは、こすりつけるとパンのほうがちぎれてしまいます。料理家マリア・ニコラウも、こすりつけに耐える、しっかりしたパンが要ると話しています。反対に、中まで乾くほど焼くと、トマトの水分がしみ込まず、表面に浮いてしまいます。手順2で「表面はカリッと、中は弾力が残る」くらいに焼くのは、表面で果肉を削り取り、その下の柔らかい中身にトマトの汁を吸わせるためです。

焼きたてに、すぐこすりつけて、すぐ食べる

焼いた表面は、トマトの汁を吸うと少しずつ柔らかくなります。こすりつけたらすぐに塩とオリーブオイルをかけ、すぐに食べるのは、カリッとした表面と、汁を吸った中身の両方を味わうためです。料理人ジョルディ・ビラも、手早く作ることを勧めています。

塩を先にふって、オリーブオイルをあとからかけるのは、ポメスが示した順番です。ポメスは、油のあとに塩をふると塩がすべり落ち、先にふるとトマトにつくとしています。トマトの汁で湿った表面に塩がつき、溶けて全体に広がります。一方で、ほかの情報源の多くは、オリーブオイルを先にかけて塩を最後にふり、マルドンの塩のような粒の粗い塩を使う料理人もいます。塩と油の順番は人によって違います。

片面か、両面か

ポメスの作法では、パンの両面にトマトを塗ります。ディレクト・アル・パラダルの記事は、片面だけの人も両面の人もいるとしています。この記事では、日本のオーブントースターで焼いた厚さ1.5cmのパンが柔らかくなりすぎないよう、片面にしました。両面に塗るときも、焼きたてにすぐこすりつけて、すぐに食べます。

料理科学:トマトの品種と、日本のトマトでの選び方

冬まで吊るしておく「吊るしトマト」

カタルーニャで好まれるのは、「トゥマケット・ダ・ペンジャ」(吊るすトマト)と呼ばれるトマトです。名前のとおり吊るして保存し、生のトマトが少ない冬のあいだも使います。「ラメリェット」(小さな房)と呼ばれる保存用のトマトもあり、マヨルカ島のバニャルブファルのものが知られています。

カタルーニャ工科大学などの研究者による論文によると、吊るしトマトは、熟し方を変える遺伝子の変異によって、4か月以上もちます。保存のあいだに、ブドウ糖・果糖・クエン酸は減り、リンゴ酸とグルタミン酸(うま味の成分)は増えます。地元の人は、とれたてより保存して熟成したものの味を好むと報告されています。

バルセロナの料理人アダ・パレリャーダは、このトマトは、皮はつまんで持ちやすく、果肉はパンに当てるとはがれやすいように手が加えられてきた、と話しています。先に紹介したマサネスも、最初のパン・コン・トマテには、果肉が柔らかく汁気が多く、よくこすりつけられるトマトが使われていたのだろうと見ています。

うま味は種のまわりに多い

トマトのうま味の主な成分であるグルタミン酸は、外側のかたい果肉よりも、種とそのまわりのゼリーを含む内側に多く含まれます。2007年に発表された英国の研究では、内側の部分のほうがうま味の後味が強いと評価されました。手順1で半分に切ってゼリーを切り口に出し、手順3でこすりつけるのは、このゼリーと柔らかい果肉をパンに移すためです。

日本のトマトで作るとき

日本で吊るしトマトはまず手に入りません。スペインの料理人たちも、カタルーニャの外では、その土地で手に入る、赤く熟して香りのよいトマトを使えばよいとしています。

  • よく熟したものを選ぶ:色が赤く、指で押すと少しへこむもの。かたく青みが残るトマトは、酸味が強く、こすりつけても果肉がパンに移りにくくなります。
  • 冷蔵庫に入れない:バルセロナとマドリードで店を営む料理人ダニ・ロカは、トマトは冷蔵庫ではなく、乾いた涼しい場所に置くよう勧めています。料理科学者のハロルド・マギーも、トマトを冷やすと香りが弱くなるとしています。冷蔵庫にあったものは、数時間前に出して室温にしておきます。
  • 中くらいの大きさ:大きすぎるトマトは手に持ってこすりにくく、ミニトマトは1切れに何個も要ります。中くらいのトマトかミディトマトが使いやすい大きさです。

地域による違いと、のせるもの

にんにくをこする形

焼いたパンに、トマトの前ににんにくの切り口をこすりつける作り方もあります。4切れでにんにく2かけ(約10g)を用意し、縦半分に切って、1切れに半分ずつ使います。スペインの料理サイト、ディレクト・アル・パラダルのレシピは、この形です。

カタルーニャでも、にんにくを使うかどうかは意見が分かれます。ニコラウは、にんにくは焼いたパンにだけ合うとし、ビラは、トルティージャや魚のフライと合わせるときは使わないそうです。この記事では、のせるものとけんかせず、トマトとオリーブオイルの味がまっすぐに出る、にんにくなしの形を主にしました。

生ハムをのせる形

ディレクト・アル・パラダルの記事が、とくに合うとしているのが生ハムです。手順5のあとに、1切れに生ハム15〜20gをのせます。スペインのハモン・セラーノやハモン・イベリコのほか、チーズ、フエ(細い乾燥ソーセージ)、トルティージャなどものせます。

マヨルカ島や、アンダルシアでは

アラの記事によると、マヨルカ島やイビサ島では、トマトをこすりつけずに薄切りにして、パンにはさむ食べ方もあります。アンダルシアの朝ごはんにもトマトをのせたトーストがあります。ディレクト・アル・パラダルの記事は、カタルーニャではトマトが先なのに対し、アンダルシアではオリーブオイルを先にかけるのが正しいとされている、と書いています。

手に入りにくい材料の代用

  • パン:カタルーニャで使うのは「パ・ダ・パジェス」(農家のパン)と呼ばれるパンで、皮がしっかりしていて、中は少し酸味があり、気泡の多いスポンジのような生地です。日本ではパン・ド・カンパーニュやバタールが近いです。スペインの記事では、バゲットは勧められていません。柔らかい食パンは、こすりつけるとちぎれやすいので向きません。
  • トマトがかたくて、こすりつけられないとき:スペイン出身の料理人ホセ・アンドレスは、うまくこすれないときはすりおろしてもよいとしています。トマトの切り口を目の粗いおろし金でおろし、皮は手に残して捨てます。おろした果肉に塩1.5gを混ぜ、焼いたパン1切れに大さじ2(約30g)ずつのせて広げ、オリーブオイルをかけます。ただし、カタルーニャの新聞アラの記事は、すりおろしを避けるべきやり方のひとつに挙げています。
  • オリーブオイル:スペインの料理人たちは、アルベキーナ種の、穏やかで少し甘みのあるエクストラバージン・オリーブオイルを勧めています。手に入らなければ、スペイン産のエクストラバージン・オリーブオイルを使います。
  • 塩:普通の塩で作れます。粒の粗い塩やフレーク状の塩を使うと、粒の歯ざわりが残ります。その場合は、オリーブオイルを先にかけ、塩を最後にのせます。

失敗したときは

  • パンがべちゃっとする:パンの焼き方が足りないか、トマトをこすりつけすぎました。表面がカリッとかたくなるまで焼き、トマトは表面がうっすら赤くなるくらいにとどめます。作ってから時間をおいても柔らかくなります。
  • トマトが皮ごとちぎれて、果肉がつかない:トマトが熟していないか、冷えています。熟した室温のトマトを使い、かたいときはすりおろします。
  • 酸っぱい:熟していないトマトを使ったのが主な原因です。アラの記事も、熟していない、赤みやつやのないトマトを使って酸っぱくなることを、よくない作り方のひとつに挙げています。
  • パンがかたくて、トマトがしみ込まない:焼きすぎて中まで乾いています。表面だけ色づいたところで取り出します。

安全のために

焼きたてのパンやオーブントースターの網、魚焼きグリルの受け皿は熱くなっています。パンを取り出すときは、トングや鍋つかみを使ってください。トマトは皮ごとパンに当てるので、よく洗ってから使います。

保存

焼きたてにこすりつけて、すぐに食べるものです。作り置きはできません。

  • トマト:使いかけの半分は、切り口にラップをして冷蔵庫に入れ、翌日までに使います。使う前に室温に戻します。
  • パン:すぐに使わない分は、厚さ1.5cmに切ってから1切れずつラップで包み、冷凍しておくと、凍ったままオーブントースターで焼けます。焼き時間は1〜2分長くなります。

スペイン・ポルトガルのほかのレシピ

もっと知りたい人へ

  • ハロルド・マギー『マギー キッチンサイエンス』トマトの香りと冷蔵の関係や、パンの焼き色の仕組みなど、料理科学の定番Amazonで見る楽天で見る

出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。